本の覚書

本と語学のはなし

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【振り返り】2024年2月

【読書・語学】 ▼原典講読は以下のとおり。 ▼モンテーニュ『エセー』第1巻第39章(第38章)「孤独について」から第47章「われわれの判断の不確実なことについて」まで。 ▼セネカ『生の短さについて』。 ▼プルタルコス『どのようにして若者は詩を学ぶべきか』…

【モンテーニュ】自分の思いこみを死者に転移させ【エセー1.46】

モンテーニュ『エセー』第1巻第46章「名前について」を読了する。 いろんな野菜が入っていてもサラダと総称されるように、名前に関する様々な考察を一括りにして「名前について」という考察にまとめたものである。 たとえばアミヨがプルタルコスを訳したとき…

Newton 2024年4月号【能登半島巨大地震】

Newton(ニュートン) 2024年4月号 [雑誌]ニュートンプレスAmazon 予定を変更して緊急特集が組まれた。 能登半島で群発地震が頻発していたことは誰でも知っていることである。ところが、この辺りはプレートが沈み込む海溝であるため、海溝型地震として扱われ、…

【道元】撞(とう)の前後に妙声(みょうしょう)綿々たるものなり【辯道話】

道元禅師全集: 原文対照現代語訳 (第1巻)作者:道元,水野 弥穂子春秋社Amazon ただ坐上の修しゅのみにあらず、空くうをうちてひびきをなすこと、撞たうの前後に妙声めうしやう綿々めんめんたるものなり。(p.11) ただ坐禅修行のときだけではなく、空くうを打っ…

【モンテーニュ】冷静に議論しようとする人は【エセー1.45】

モンテーニュ『エセー』第1巻第45章「ドルーの戦いについて」を読了する。 ドルーの戦いとは、第1次宗教戦争のときに、パリ西方80キロの町ドルーで行われたカトリックとプロテスタントとの戦闘のこと。 カトリック側では、モンモランシー元帥が窮地に陥る中…

【モンテーニュ】出陣のまぎわになっても熟睡していた【エセー1.44】

モンテーニュ『エセー』第1巻第44章「睡眠について」を読了する。 アレクサンドロスや小カトーのように、戦闘の前や命の危険があるときにも、平然と眠ることのできるほど肝のすわった英雄もいる。 一方、小心や憔悴のために、戦いの前に、あるいは戦闘中にさ…

パイドロス/プラトン

パイドロス (岩波文庫 青 601-5)作者:プラトン岩波書店Amazon セネカとプルタルコスの全作品を読破したいところだが、無職のため本の購入を控えているところであるから、しばらくは手元にあるギリシア・ローマの古典を読むことにする。 プラトンでは、しばし…

【モンテーニュ】王様然としていばりくさっている小者【エセー1.43】

モンテーニュ『エセー』第1巻第43章「奢侈取締令について」を読了する。 奢侈取締令はモンテーニュの頃に何度か出された華美を禁ずる法令であるが、宮廷人が贅沢をやめなかったために、効果は上がらなかった。 まず王侯から質素な身なりをすれば、それが自ず…

エセー2/モンテーニュ

エセー 2作者:ミシェル・ド モンテーニュ白水社Amazon 第1巻第26章から第57章まで収録。これで第1巻は終わりである。 宮下志朗はラブレーと同時進行でモンテーニュを翻訳していた。信じがたいことである。過密なスケジュールのせいかどうか知らないけれど、…

【モンテーニュ】竹馬を外して身長を測らなくてはいけない【エセー1.42】

モンテーニュ『エセー』第1巻第42章「われわれのあいだの個人差について」を読了する。 人間同士の間の個人差は、人間と動物との差よりも大きいのではないか、とモンテーニュは疑う。 もっともこれは賢人と愚者との差異のことであって、王侯と庶民の間には取…

サテュリコン/ペトロニウス

サテュリコン: 古代ローマの諷刺小説 (岩波文庫 赤 122-1)作者:ガイウス ペトロニウス岩波書店Amazon ペトロニウスの『サテュリコン』とセネカの『アポコロキュントシス』を収録。この2人は、ともにネロの時代に生き、ともにネロに強いられ自殺したのである…

プルタルコス英雄伝(下)/プルタルコス

プルタルコス英雄伝 下 (ちくま学芸文庫 フ 8-3)作者:プルタルコス筑摩書房Amazon 収録されているのは、クラッスス、ポンペイウス、カエサル、キケロ(付比較)、アントニウス。天寿を全うした人は一人もいない。 キケロが比較されているのはデモステネス(…

【フランス語】名誉を軽蔑したことを自分の名誉としようとする【エセー1.41】

モンテーニュ『エセー』第1巻第41章「みずからの名声は人に分配しないこと」を読了する。 名声や名誉ばかりは、哲学者にだって完全に断ち切ることは難しい欲望である。 だが、中には自分の名誉を犠牲にした例もないわけではない。後半はそういう話がいくつも…

【フランス語】文体をわざとくずしておきながら【エセー1.40/39】

モンテーニュ『エセー』第1巻第40章(第39章)「キケロに関する考察」を読了する。 モンテーニュはキケロの完成された修辞に重きを置かない。重要なのは内容である。そこから、自身の文体について語り始める。なかなか興味深い自己分析である。 なお、1595年…

【フランス語】巣穴の入口できちんと足跡を消す【エセー1.39/38】

モンテーニュ『エセー』第1巻第39章(第38章)「孤独について」を読了する。 隠遁のすすめである。キケロや小プリニウスのごとく、後世に名を残す事業のために余暇を必要としたのとは一線を画す。セネカやエピクロスのように、ただ自分の内に引きこもりなさ…