本の覚書

本と語学のはなし

2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

7月

私の活動は、ときどきとめどなく拡散する。その間、まるで時間も能力も無限であるかのように錯覚している。やがて、それでは本当に学ぶべきことが学べない、それを専一に学んだとしても一生では短すぎるかもしれないのだ、と思い直す。今月は、そうした気ま…

「仏道」

しかあれば、仏道の功徳・要機、もらさずそなはれり。西天より東地につたはれて十万八千里なり。在世より今日につたはれて二千餘載、この道理を参学せざるともがら、みだりにあやまりていはく、仏祖正伝の正法眼蔵涅槃妙心、みだりにこれを禅宗と称ず。祖師…

代休

3日前のマウンテンバイクが芯から体を疲労させていたのだろうか、今日は一日中寝て過ごした。

対策

仕事の後、消臭スプレー、トイレ用芳香剤、シートクッションを購入。本当は車を買い替えたい。近頃スイーツに懲りたい気分だ。私は当選する人に投票したことがほとんどないような気がする。

「酒虫」

酒虫と云う物が、どんな物だか、それが腹の中にいなくなると、どうなるのだか、枕もとにある酒の瓶は、何にするつもりなのだか、それを知っているのは、蛮僧のほかに一人もない。こう云うと、何も知らずに、炎天へ裸で出ている劉は、はなはだ、迂闊なように…

東司

父の外泊が許可された。病院まで迎えに行き、帰りに市役所に寄って期日前投票。 市役所を出て直ぐにトイレに行きたいと言い出した。役所に戻ろうとしたが、父は途中にあるトイレが使える店に行くと言う。いくらもしない内に、家にまっすぐ行くと言う。役所か…

『楽しい気象観察図鑑』

◎武田康男『楽しい気象観察図鑑』(草思社) いろんな気象現象を、理屈をつけて解説してくれる。気象予報士を目指す人向けの本ではなく、『空の名前』と同様、ヤングアダルトに分類されている。 雲については、そんなに充実してはいない。買う必要はなさそう…

『空の名前』

◎高橋健司『空の名前』(角川書店) 仕事で隣県に行き、山や田んぼを眺めながらマウンテンバイクを漕いできた。アウトドア派の人の気持ちが、全く理解できない。 自然に囲まれて生活しているせいかもしれないが、私は自然愛好家ではない。動物やら鳥やら昆虫…

『雲の名前の手帖 改訂版』

◎高橋健司『雲の名前の手帖 改訂版』(シンク) 不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心(石川啄木) 十五の頃、たとえ不如意の人生を送ろうとも、空の雲を見ていられるなら、これを不幸と呼ぶことなど思いもよらなかった。 一度それをある同級生…

★ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』4・5(亀山郁夫訳,光文社古典新訳文庫) 5巻は60ページのエピローグの後に、「ドストエフスキーの生涯」100ページ、「解題」200ページつき。 せっかく新訳を買ったが、新潮文庫で読むかも。かつて原訳で憑かれた…

『正法眼蔵(二)』

●道元『正法眼蔵(二)』(水野弥穂子校注,岩波文庫) 75巻本の「古鏡」から「諸法実相」まで。 最近参照しているのは、春日佑芳の『正法眼蔵を読む』(ペリカン社)のみである。ほとんど修証一等からのみ読もうという、単純といえば単純に徹した解釈。 …

シャ・ノワール

賢治「双子の星」、モンテーニュ「嘘つきについて」「弁舌の遅速について」を読む。 斎藤慶典『フッサール 起源への哲学』(講談社選書メチエ)を始める。トルストイは捗らない。残りを一気に読んでしまうことは諦めて、哲学関係を併読することにした。 哲学…

「うたかたの記」

鴎外「うたかたの記」を読む。 「うたかた」と言って誰もが思い出すのは、『方丈記』の冒頭であろう。 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世中(よのなか)…

回帰

『アンナ・カレーニナ』は相変わらずなかなか読み進めることができない。 時々休憩したくなるが、現代日本文学からはいったん離れることにした。代わりに『芥川龍之介全集』で短編を幾つか読む。鴎外と賢治に加えて、ちくま文庫で読みかけの全集はこれで3種…

『女警部ジュリー・レスコー 目撃者』

フランスの警察ものドラマ・シリーズ。 今回レスコーはドイツに乗り込んで捜査する。ドイツ人が皆流暢にフランス語を話している。ドイツ人同士でもフランス語だ。 私は純粋に作品を楽しむために映画やドラマを見ることはほとんどなくて、大概は語学や風俗を…

小田実訳『イーリアス』

図書館で文芸誌4誌の7月号を借りる。佐藤友哉の三島由紀夫賞作品、島本理生のインタビュー、大江健三郎と長嶋有の対談など、気にはなるけど読まないだろう。私が本格的に足を踏み入れるべき領域ではない。次回からはもう借りることもないだろう。 1つ驚い…

★『芥川龍之介全集』全8巻(ちくま文庫) ★武田泰淳『目まいのする散歩』(中公文庫) ★武田百合子『富士日記』全3巻(中公文庫) ★武田百合子『犬が見た ロシア旅行記』(中公文庫) ★武田百合子『日日雑記』(中公文庫) ★武田百合子『遊覧日記』(ちく…

『シルエット』

●島本理生『シルエット』(講談社文庫) 「シルエット」「植物たちの呼吸」「ヨル」を収録。 昨日『限りなく透明に近いブルー』を読んでしまったら、金原までも受け付けられない気がしてきた。綿矢の方は、『インストール』がよかっただけに、『蹴りたい背中…

新潟県中越沖地震

個人的な報告。人的にも物的にも、特に被害なし。 今回は海に近い地区が被害を受けている模様。

『限りなく透明に近いブルー』

●村上龍『限りなく透明に近いブルー』(講談社文庫) これもまた芥川賞受賞作、それもとびきり鮮烈なやつだ。 クスリにセックスに暴力。好き嫌いの激しい学生時代だったら、途中で投げ出した上に、村上龍を憎みさえしたに違いない。もっとも、読まなくても読…

同時代日本文学

現代日本文学を読む試みは未だ終わってないのだけど、用意したものに全部目を通すのも馬鹿らしくなってきたし、結論はほぼ出ているので、ここらへんで一応の総括をしておこう。 ¶ 短編小説を書くための参考として読み始めたが、小説は書かない。書くならエッ…

『蛇を踏む』

◎川上弘美『蛇を踏む』(文春文庫) 芥川賞受賞の表題作のほか、「消える」「惜夜記(あたらよき)」を収録する。 川上自身のあとがきによれば、「自分の書く小説を、わたしはひそかに「うそばなし」と呼んでいます」とのことだ。「うそばなし」なんて文学の…

『猛スピードで母は』

●長嶋有『猛スピードで母は』(文春文庫) 芥川賞の表題作と「サイドカーに犬」を収録する。タイトルが苦手だ。 親は離婚するか、既にしている。これは長嶋作品の基調であるらしい。「サイドカーに犬」では、家を出た実の母親よりも父の愛人の洋子さんの方に…

『トリツカレ男』

●いしいしんじ『トリツカレ男』(新潮文庫) トリツカレ男のジュゼッペとペチカとハツカネズミ、それから死んでしまったタタンの、童話のように描かれたなかなかいい話。 病院で読むにはちょうどよい。 リハビリ中心の治療に切り替えるため、今朝、父はN病…

『ブラフマンの埋葬』

●小川洋子『ブラフマンの埋葬』(講談社文庫) 今や芥川賞の審査員だ。 ブラフマンというのは何だかよく分からない動物で、怪我をしているところを「僕」に拾われ、ひとつの季節を共に過ごし、やがて死ぬ。 その名前はサンスクリットで「謎」を意味すると碑…

『オアシス』

●生田紗代『オアシス』(河出文庫) 初めの5ページで投げ出そうとした。文藝賞なんて信用してないのだ。思いとどまって読んだら、案外面白かった。 ユーモアがあるのがよい。文章は下手だ(もちろん小学生並ということではなくて、作家として)。しかし、下…

『パーク・ライフ』

●吉田修一『パーク・ライフ』(文春文庫) 芥川賞の表題作と「flowers」を収録。 面白く読めるのだが、それだけ。吉田修一を好んで読む友人のホームページを見たら、どうやらこの本から入ってはいけなかったらしい。不幸にも私はこの本から入ってしまった。…

『犬婿入り』

●多和田葉子『犬婿入り』(講談社文庫) 多和田葉子。早稲田でロシア文学を専攻した後、ドイツに渡り、現在は日本語とドイツ語で執筆活動をする。当然興味は持つわけだが…。 「ペルソナ」はドイツ暮らしにおける軽いノイローゼを扱った作品。人種差別やナシ…

『アンナ・カレーニナ(上)』

●トルストイ『アンナ・カレーニナ(上)』(中村融訳,岩波文庫) 兄の不倫による夫婦仲の危機を調停するため、アンナはペテルブルクからモスクワに向かう。そこで彼女はウロンスキーと出会い、自らも不倫へとのめり込んで行く。 中学時代に読んだけれど、退…

『熊の場所』

●舞城王太郎『熊の場所』(講談社文庫) 「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」の3作を収める。 書かれていることの凄惨さにもかかわらず、この文体のために救われていると思っている人は多いようだけど、逆ではないか。全てが許されるこの文体だからこそ…