本の覚書

本と語学のはなし

2024-01-01から1年間の記事一覧

【ホームズ】もう退屈が襲ってきたよ【赤毛組合】

現在私が持っているホームズの翻訳は、オックスフォード版を底本とする河出書房新社の全集(文庫版も)と、事件を推定年代順に並べ替えたベアリング・グールド版を底本とする東京図書の全集である。 両者ともに特色があり、注釈も豊富である。だが、原典講読…

Newton 2024年12月号【不死のサイエンス】

Newton(ニュートン) 2024年12月号 [雑誌]ニュートンプレスAmazon 個人としての不老不死について、私は何の憧れも抱いてはいない。現在モンテーニュやセネカに親しんでいるからばかりではなく、学生時代に読んだ実存主義だとか、もっと古くは「人みな生を楽し…

【振り返り】2024年10月

【読書】 ▼モンテーニュ:『エセー』第2巻第12章「レーモン・スボン弁護」を引き続き。 ▼セネカ:『マルキアに寄せる慰めの書』を引き続き。 ▼プルタルコス:『講義を聴くことについて』を引き続き。 ▼ホームズ:『赤毛組合』を始める。 ▼ニューヨークタイム…

緋色の習作 シャーロック・ホームズ全集①/アーサー・コナン・ドイル

緋色の習作 (河出文庫 ト 10-1 シャーロック・ホームズ全集 1)作者:アーサー・コナン ドイル河出書房新社Amazon この作品のタイトルは普通『緋色の研究』と訳されている。それを敢えて『緋色の習作』としたことについて、訳者は「はじめに」の中でこう書いて…

【購入】シャーロック・ホームズの冒険 全巻ブルーレイBOX

シャーロック・ホームズの冒険 全巻ブルーレイBOX [Blu-ray]ジェレミー・ブレットAmazon 職場の休憩時間にシャーロック・ホームズを読むことにした。大型本を持ち運ぶことはできないので、ペーパーバックと文庫本を購入した。ニューヨークタイムズの定期購読…

【ホームズ】厳しい規則に違反して【赤毛組合】

職場の休憩時間には、週刊のニューヨーク・タイムズから日々1記事をピックアップして読んでいた。それをやめて、シャーロック・ホームズに代えようと決心する。 一番の理由は、半年ほど前の値上げである。これまで1紙220円だったのが、5割上がって330円にな…

ミシェル 城館の人 精神の祝祭/堀田善衛

ミシェル 城館の人 第3部 精神の祝祭作者:堀田 善衞集英社Amazon イタリア旅行から死に至るまで。 堀田は歴史の中からモンテーニュを見つめる。それは私を含めて、一般の読者にはなかなか得られない視線である。 イタリア旅行から戻り、モンテーニュはボルド…

Newton 2024年11月号【発達障害の脳科学】

Newton(ニュートン) 2024年11月号 [雑誌]ニュートンプレスAmazon モンテーニュは「レーモン・スボン弁護」において、こう言っている。 月を天の地球にしたり、アナクサゴラスのように、月にもたくさんの山や谷があると推測したり、プラトンやプルタルコスの…

ミシェル 城館の人 自然 理性 運命/堀田善衛

ミシェル 城館の人 第2部 自然 理性 運命作者:堀田 善衞集英社Amazon ミシェルの登場は控えめで、宗教戦争の時代背景を宮廷を中心に描くことに力が入れられている。しかし、それはミシェルの読者にとって迷惑な話などでは決してない。 カトリーヌ・ド・メデ…

【振り返り】2024年9月

【読書】 ▼モンテーニュ:『エセー』第2巻第11章「残酷さについて」を終え、とうとう長大な第12章「レーモン・スボン弁護」に取りかかる。 ▼セネカ:『マルキアに寄せる慰めの書』を引き続き。 ▼プルタルコス:『アポロニオスへの慰めの手紙』を終え、『講義…

【購入】天体観測手帳2025

天体観測手帳2025作者:早水 勉技術評論社Amazon 来年で3冊目。 文庫本サイズだから、老眼の進行した私にとっては、決して書き込みやすいわけでもないし、読みやすいわけでもない。だが、最近は職場で仕事をするときも、家で本を読むときも、中近の眼鏡をかけ…

Newton 2024年10月号【もつれる量子】

Newton(ニュートン) 2024年10月号 [雑誌]ニュートンプレスAmazon 量子もつれの状態になった2つの光子は、特殊な関係性で結ばれる。一方の偏光の向きが観測によって縦と決定したら、その瞬間にもう一方の偏光の向きは横と決定される。いずれも観測するまでは…

【プルタルコス】喜ばしいふさわしい仕方で【慰めの手紙】

Moralia, Volume II: How to Profit by One’s Enemies. On Having Many Friends. Chance. Virtue and Vice. Letter of Condolence to Apollonius. Advice About Keeping Well. Advice to Bride and Groom. The Dinner of the Seven Wise Men. Superstition (…

セネカ哲学全集5 倫理書簡集Ⅰ/セネカ

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I岩波書店Amazon 『哲学書簡集』はルーキーリウスに宛てて書かれた手紙の集成である。岩波書店の『セネカ哲学全集』では、第5巻と第6巻に収められている。 実際に封をして送られた手紙ではないようだ。それどころか、ルーキー…

Newton 2024年9月号【必修の数学】

Newton(ニュートン) 2024年9月号 [雑誌]ニュートンプレスAmazon 一番好きなのは宇宙に関する記事である。 セネカは言う、「私が知恵を見つめて恍惚とするさまは、まさに、しばし宇宙そのものを見つめるときのようだ」(書簡64)。「君は私に禁じるのかね、宇…

【モンテーニュ】人間が他の被造物に対して有するとかいう【エセー2.11】

Essais, Les作者:Montaigne, Michel DeImprint unknownAmazonエセー 3作者:ミシェル・ド モンテーニュ白水社Amazon Mais, quand je rencontre, parmy les opinions les plus moderées, les discours qui essayent à montrer la prochaine ressemblance de no…

【ホームズ】あの女【ボヘミア】

New Annotated Sherlock Holmes: The Short Stories (The Annotated Books)作者:Doyle, Arthur Conan, SirW. W. Norton & CompanyAmazonシャーロック・ホームズの冒険 (シャーロック・ホームズ全集 3)作者:アーサー・コナン ドイル河出書房新社Amazon He use…

【ホームズ】彼が失敗するなどとは【ボヘミア】

New Annotated Sherlock Holmes: The Short Stories (The Annotated Books)作者:Doyle, Arthur Conan, SirW. W. Norton & CompanyAmazonシャーロック・ホームズの冒険 (シャーロック・ホームズ全集 3)作者:アーサー・コナン ドイル河出書房新社Amazon So acc…

ミシェル 城館の人 争乱の時代/堀田善衛

ミシェル 城館の人 第1部 争乱の時代作者:堀田 善衞集英社Amazon 新年の抱負は甚だ簡単で、「モンテーニュ『エセー』のフランス語原典を中心に。和書で必ず読みたいのは、宮下志朗訳『エセー』全7巻、堀田善衛『ミシェル 城館の人』3部作。ギリシア語はプル…

【振り返り】2024年8月

【読書・語学】 ▼今月の原典講読。 ▼モンテーニュ:『エセー』第2巻第10章「書物について」を終え、第11章「残酷さについて」の途中まで。 ▼セネカ:『マルキアに寄せる慰めの書』を引き続き。 ▼プルタルコス:『アポロニオスへの慰めの手紙』を引き続き。 ▼…

モラリア5/プルタルコス

モラリア 5 (西洋古典叢書 G 61)作者:プルタルコス京都大学学術出版会Amazon 『イシスとオシリスについて』、ピュティアをめぐる対話篇と呼ばれる『デルポイのEについて』『ピュティアは今日では詩のかたちで神託を降ろさないことについて』『神託の衰微につ…

Newton 2024年8月号【宇宙からの挑戦状】

Newton(ニュートン) 2024年8月号 [雑誌]ニュートンプレスAmazon もう「ニュートン」は放棄してしまってもいいかなと思いつつ、実際時々休止しつつも、定期購読がまだだいぶ残っているので、もったいなくて続けている。 中年に至るまで科学を蔑ろにしてきたツ…

【モンテーニュ】プルタルコスがフランス人になってから【エセー2.10】

モンテーニュ『エセー』第2巻第10章「書物について」を読了する。 最近、原典講読のペースが少し落ちてきている。仕方のないことかもしれないが、ここにこそ一番力を入れなくてはいけない。日課に若干の修正が必要だろう。 Essais, Les作者:Montaigne, Miche…

Newton 2024年7月号【超感動の人体】

Newton(ニュートン) 2024年7月号 [雑誌]ニュートンプレスAmazon 夜勤が始まって半月以上が経ち、生活のリズムもようやく定まりつつある。 朝、帰宅後に『フレンズ』を見たり、菜園で軽い作業をしたりして、9時頃に就寝。午後3時頃に起床して、出かけるまでに…

【振り返り】2024年7月

【読書・語学】 ▼今月の原典講読。 ▼モンテーニュ:『エセー』第2巻第8章「父親が子供に寄せる愛情について」途中から、第10章「書物について」途中まで。 ▼セネカ:『閑暇について』を終え、『マルキアに寄せる慰めの書』途中まで。 ▼プルタルコス:『アポ…

セネカ哲学全集2 倫理論集Ⅱ/セネカ

セネカ哲学全集〈2〉倫理論集II作者:セネカ岩波書店Amazon 『ポリュビウスに寄せる慰めの書』『ヘルウィアに寄せる慰めの書』『寛恕について』『恩恵について』を収録。倫理論集はこれでおしまいである。 ヘルウィアはセネカの母である。慰めの書は死別の悲…

エセー7/モンテーニュ

エセー 7作者:ミシェル・ド・モンテーニュ白水社Amazon 第3巻第9章「空しさについて」から第13章「経験について」を収録。これで『エセー』はおしまいである。 モンテーニュは旅好きであった。第9章「空しさについて」より。 精神は、旅をしながら、未知のも…

モラリア4/プルタルコス

モラリア (4) (西洋古典叢書 G 104)作者:プルタルコス京都大学学術出版会Amazon 『ローマ習俗問答』『ギリシア習俗問答』『ギリシア・ローマ対比史話集』『ローマ人の運について』『アレクサンドロスの運または徳について』『アテナイ人の名声は戦争によるか…

【セネカ】賢者を許容できる国も賢者が許容できる国も見出せない【閑暇について】

セネカ『閑暇について』を読了する。 Moral Essays, Volume II: De Consolatione ad Marciam. De Vita Beata. De Otio. De Tranquillitate Animi. De Brevitate Vitae. De Consolatione ad Polybium. De Consolatione ad Helviam (Loeb Classical Library)作…

【モンテーニュ】下僕に盗み取られて手もとにない【エセー2.9】

モンテーニュ『エセー』第2巻第9章「パルティア人の武器について」を読了する。 Essais, Les作者:Montaigne, Michel DeImprint unknownAmazonモンテーニュ全集〈3〉モンテーニュ随想録 (1983年)Amazon Or par ce qu’elle me semble bien fort approchante de…