本の覚書

本と語学のはなし

2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『竜馬がゆく(七)』

●司馬遼太郎『竜馬がゆく(七)』(文春文庫) 第二次長州征討は失敗した。孝明天皇は没し、勅勘を受けていた岩倉具視が、薩長と結びつきつつ朝廷工作を始めた。機は熟しつつある。朝廷主催という形で、四賢侯(薩摩・島津久光、伊予宇和島・伊達宗城、越前…

『万延元年のフットボール』

●大江健三郎『万延元年のフットボール』(講談社文芸文庫) 初めての大江健三郎。昔から生きている人の本を読むのが苦手だったのだ。 私の育った環境の中では出会いにくい作家でもあった。私の家ではずっと産経新聞をとっているが、それはこの地域でも少数派…

大いに遅れている「夜の果てへの旅」

C’est difficile d’arriver à l’essentiel, même en ce qui concerne la guerre, la fantaisie résiste longtemps. Les chats trop menacés par le feu finissent tout de même par aller se jeter dans l’eau. (p.33) 戦争みたいな問題でも、本質に到達する…

生活適用学習聖書(欽定訳)届く

文語訳聖書のよく分からないところを欽定訳聖書で見てみる。しかし、文語訳は欽定訳からの重訳の趣もあって、全く同じようなふうに分からないことがある。ちょっと長いが、創世記第六章の第一節から第四節まで。 1 人地の面おもてに敷衍ふえはじまりて女子を…

携帯解約

あまりに使わないので携帯電話を解約してきた。引き止められるかと思いきや、あっさり手続きは進み、帰宅したときには既に使えない状態になっていた。 本を買う。先ず安部公房の『砂の女』と『箱男』。前者は中学の時に読んだ。中学生の私に選ばせれば、中学…

長続きしないもの

文語訳を読み始めた。心地よい。大正に改訳された新約とは違い、明治のままの旧約は句点がない。慣れないと読みづらいかも知れない。 又アダムに言給ひけるは汝その妻の言(ことば)を聴きて我が汝に命じて食(くら)ふべからずと言ひたる樹の果(み)を食ひ…

買い物

休みを利用して、細々したものをいろいろ買い込む。久しぶりに本屋にも行った。司馬遼太郎や吉川英治の歴史小説のほか、気になっているもののこれまで読まずにいた藤村の『夜明け前』、谷崎の『細雪』、三島の『豊饒の海』などをぱらぱらめくってみる。今は…

聞く聖書

キャンセルしようかなどうしようかなと思っている内に発送されてしまった。欽定訳の聞く聖書。 創世記と詩篇とマタイを二章ずつ試聴した。欽定訳では独特の記号を使って固有名詞の音写に努めているけど、実際に発音を聞くことができるのが一番ありがたい。 …

書くために

【辞書】 (1) 『福武国語辞典』(Benesse) 書くために編集された辞典。類義表現、和語から漢語への言い換えが調べられるほか、詞藻という語彙を豊かにするためのコラムも収録。語彙を増やし語感を養うには、一にも二にも昔の作家の本を読むことだろうけど、…

『ヘンリー六世 第一部』

●ウィリアム・シェイクスピア『ヘンリー六世 第一部』(小田島雄志訳、白水Uブックス) 時代は百年戦争末期。ジャンヌ・ダルクも妖女の趣ではあるけど登場する。一方で、すでに薔薇戦争の芽も萌している。まだまだ序曲という感じ。 熱心にシェイクスピアを読…

聖書

このところ聖書熱に浮かされていた。 大人しく新共同訳を読んでいればいいのだろうけど、なんだか飽き足りなくて、いつもの通り先ずはバルバロ訳を眺め、続いて口語訳を買おうと企て、ついには文語訳の繙読に取り掛かり、これだけでは分かりかねるからNIVの…

『竜馬がゆく(六)』

●司馬遼太郎『竜馬がゆく(六)』(文春文庫) 薩長同盟締結のために奔走し、事が成った直後寺田屋で襲撃され、その時に受けた傷の療養も兼ねて、おりょうと霧島山のふもと塩浸(しおひたし)温泉へ行き(日本初の新婚旅行とも言われる)、第二次長州征討で…

『源氏物語(一)』

●『源氏物語(一) 新編日本古典文学全集20』(阿部秋生ほか校注・訳、小学館) 「桐壺」から「花宴」まで。 この全集は詳しい注釈と全訳つきで(ないのもあるようだけど)、初心者が読むにはとてもありがたい。私も『枕草子』と『源氏物語(一)』とで古文…

玉上訳購入

とりあえず三巻まで購入。前半が原文、後半が現代語訳。学者の訳でもあるし、原文を読む助けとしては、まず安心できる(意図的かどうか、ちょっとした訳抜けの個所は既に発見したけど)。 非常にありがたいことに、各巻ごとの人物相関図が載っている。錯綜し…

『竜馬がゆく(五)』

●司馬遼太郎『竜馬がゆく(五)』(文春文庫) 元治元年の話。前巻にもまして長州藩の狂騒した年である。 池田屋事件で新選組にクーデターを事前に阻止されるも、今度は禁門の変を起こしてあわや御所を乗っ取りそうになる。その後、四国艦隊に下関を砲撃され…

宅配買取

ブックオフ・オンラインに宅配買取という制度があるのを知り、今回はこれを利用してみることにした。*1 今日の午前中に段ボールに本を詰め、ネット上で申し込み、明日の午前中に宅配業者に取りに来てもらう。車がなくて売りには行けないので、しばらく収納に…

与謝野晶子訳

『源氏物語』を読むのに与謝野晶子訳を参考にしようと調べていたら、全訳をネット上で見ることができる。*1これはいいやと思ったのも束の間、原文と対照させるには正確さを欠いていることを知った。 「花宴」から。 次に頭中将、人の目移しもただならずおぼ…

本棚の整理とこれから

本棚の整理をする。大量に本を購入した分、本棚から抜き去られる本も大量にある。今回は、経済、学習参考書、語学の本が中心だ。段ボールに詰める作業はこれから。車がないので、ブックオフの宅配買取を依頼するかもしれない。 これにて大いなる消費の時代の…

新潮日本古典集成

「新潮日本古典集成」が届いた。 上の段に注(ときに訳)、下の段に本文という二段組み。最大の特徴は、分かりにくい本文の右わきに、赤い字で現代語訳がついていること。これで大抵理解できるようになっているのだけど、さて、これまで小学館の全集の全訳と…

『原発はいらない』

●小出裕章『原発はいらない』(幻冬舎ルネッサンス新書) タイトルの下、著者の名前の上に、誇らしげに肩書が書かれている。「京都大学原子炉実験所 助教」。新書のカバーに肩書を明示するのは珍しい。専門家の発信としての信憑性の担保、というのが出版社の…

『日米同盟の正体』

●孫崎亨『日米同盟の正体 迷走する安全保障』(講談社現代新書) 冷戦以降、いかなるライバルも容認しない方向へと戦略の舵を取ったアメリカ。その中で、日米同盟の適用範囲も極東から全世界へと拡大していく。著者は対米盲従に警鐘を鳴らし、経済の依存関係…