本の覚書

本と語学のはなし

2012-08-27から1日間の記事一覧

久しぶりに『源氏物語』

古代の祖母君の御なごりにて、歯ぐろめもまだしかりけるを、ひきつくろはせたまへれば、眉のけざやかになりたるもうつくしうきよらなり。心から、などかかううき世を見あつかふらむ、かく心苦しきものをも見てゐたらでと思しつつ、例の、もろともに雛遊びし…

久しぶりに『青春は美わし』

Doch entstand gerade hieraus für die letzte Zeit meiner Ferien ein köstlich freier, schwebender Zustand zwischen Zufriedensein und Mehrverlangen, der mir wie ein großes Glück im Gedächtnis steht. (p.67) しかし、まさしくその点から、休暇の最…

久しぶりに『アエネーイス』

ut primum alatis tetigit magalia plantis, Aenean fundantem arces ac tecta novantem conspicit. (4.259-261) 羽ある足でカルタゴの、むらがる家居に着くや否、 まずこの神〔メルクリウス〕の目にうつる、ものは高城(たかき)を構築し、 新舎をいとなむ…

久しぶりに『イーリアス』

θάμβησεν δ’ Ἀχιλεύς, μετὰ δ’ ἐτράπετ’, αὐτίκα δ’ ἔγνω Παλλάδ’ Ἀθηναίην· δεινὼ δέ οἱ ὄσσε φάανθεν· (1.199-200) 驚いて振り向いたアキレウスは、凄まじいばかりに輝く女神の両眼を見て、すぐにパラス・アテネをそれと識った。(上p.20) まだまだ残暑は厳…

『チャタレイ夫人の恋人』開始

ジェイムズに苦労してきたお蔭で、ずいぶん素直で易しい英語に見える。最後までこのままの調子で進まんことを。 例によって冒頭部分を書き抜いておく。参照するのは、新潮文庫の伊藤整訳(伊藤礼補訳)。 Ours is essentially a tragic age, so we refuse to…

『The Turn of the Screw』

●Henry James『The Turn of the Screw』(Dover) なかなか難しい英語であった。行方昭夫は、海中深く潜ってその意味するところを探り当て、説明をふんだんに補いながら、平明な日本語に置き換えている。それは語学学習者にとってはとても有難いことなのだけど…

『女中たち バルコン』

●ジャン・ジュネ『女中たち バルコン』(渡辺守章訳、岩波文庫) 第一に、和書は通勤のバスの中、勤務前の空き時間、夜勤の合間に読む。原則として家では開かない。そういうものとしてこの作品に対するのは、甚だ不適切であったかもしれない。 今後は選択の…