本の覚書

本と語学のはなし

【モンテーニュ】わが『エセー』は中間地帯で細々と生きていく【エセー1.54】

 モンテーニュ『エセー』第1巻第54章「どうでもいいことに凝ったりすることについて」を読了する。
 信仰においても、何事においても、一番上と一番下が案外相通じて、最上のものを享受することがある。その中間にあるものが、危険で、能力もなく、やっかいで、世間をかきまわすのである。

que si ces essays estoyent dignes qu'on en jugeat, il en pourroit advenir, à mon advis, qu'ils ne plairoient guiere aux esprits communs et vulgaires, ny guiere aux singuliers et excellens: ceux-là n'y entendroient pas assez, ceux-cy y entendroient trop; ils pourroient vivoter en la moyenne region. (p.313)

「この『エセー』がひとさまの判断にあたいするとしても、わたしの考えではですね、どうやら、ごくありきたりの人々にも、非凡で、優れた人々にも、あまり気に入ってもらえそうにありませんね。だって、前者には、よくわからないでしょうし、後者には、あまりにもわかりすぎてしまうでしょうからね。というわけで、わが『エセー』は、その中間地帯で、細々と生きていくことになりそうです。」(p.320-1)

 だが、モンテーニュ自身は、自分は決して上でも下でもなく、中間にある人間なのだと考えるのである。