本の覚書

本と語学のはなし

鈍感

 Puis, vers six heures, la voiture s’arrêta dans une ruelle du quartier Beauvoisine, et une femme en descendit qui marchait le voile baissé, sans détourner la tête. (p.328)

 やがて六時ごろ、馬車はボーヴォワージーヌ区のとある裏町にとまった。そしてその中から一人の女がおりて、ヴェールをかけたまま、後ろをも見ずに歩み去った。(下p.125)


 レオンはボヴァリー夫人を辻馬車に乗せ、どこにも停まらせずに何時間もひたすら走らせる(2人の待ち合わせが午前11時。大聖堂では2時間過ごしたらしい。馬車から降りたのは午後6時)。地名のオンパレードの記述が終わるときになって、ようやく何を描写した場面だったのか気が付いた。文学を読む人間とも思えない鈍感ぶりだった。
 ちなみに「こんなことパリではざら (Cela se fait à Paris !)」だったらしい。