本の覚書

本と語学のはなし

眺めのいい部屋


 フォースターの『眺めのいい部屋』を始める。原文はペンギン・クラシックス。翻訳はちくま文庫西崎憲・中島朋子訳。例によって冒頭部分を書き抜いておく。

‘The Signora had no business to do it,’ said Miss Bartlett, ‘no business at all. She promised us south rooms with a view, close together, instead of which here are north rooms, here are north rooms, looking into a courtyard, and a long way apart. Oh, Lucy!’ (p.3)

女主人シニョーラにこんなことをする権利なんてないわ」とミス・バートレットは言った。「あの人は確かに言ったのよ。南向きの眺めのいい部屋をふたつ、隣同士のを用意してくれるって。それなのにこれは北向きじゃない。北向きよ。中庭しか見えないわ。しかもこんなに離れてる。ルーシー、まったくどういうことかしら」(p.11)


 まだ少し読んだだけだが、いかにもイギリス的な感じはするけど、そんなに難しい英文ではないようだ。この冒頭部分にしても、「business」に「権利」という意味があるのはこれまではっきり認識したことはなかったが、他人の容喙を許さないときに用いる「None of your business.」を思い出せば「権利」に至るまであと半歩でしかないし、そうでなくとも文脈から容易に想像できる。それ以外に、特に面倒なことはないようだ(「here are north rooms」の繰り返しに若干考えさせられることはあるが)。
 できれば年内に読み終らせたい。