本の覚書

本と語学のはなし

『王朝貴族物語』


●山口博『王朝貴族物語 古代エリートの日常生活』(講談社現代新書
 貴族の生活入門。学習参考書で得られる古文常識の知識だけでも『枕草子』等の王朝文学に挑戦することはできるが、もう一歩進めてこういうものを読んでおけば一段と楽しみが増す。それに、文学では権力闘争のことなどあまり表面化しない。清少納言中宮定子に仕えていた頃はちょうど道長が権力の絶頂に至る時期で、定子の兄弟らは左遷されるし、清少納言が一時里に帰ったのは道長側と疑われたからだと言われていたりもするが、知らずに『枕草子』を読めばひたすら明るく軽薄な随筆としか見えないかもしれない。戦乱はなかったかもしれないけど、貴族といえども決して華麗で安穏な生活を謳歌していただけではないのだ。
 歴史書というより軽い読み物なので、日本史や古文の副読本として高校生にも薦めることができる。

王朝貴族物語 (講談社現代新書)

王朝貴族物語 (講談社現代新書)

  • 作者:山口 博
  • 発売日: 1994/06/16
  • メディア: 新書