本の覚書

本と語学のはなし

An Artist of the floating World


 『浮世の画家』も残すところ、あと50ページ。読むスピードを倍にするという目標は未だ全く達成できていないが、三倍くらいまでの伸びしろは十分にあるだろう。

the streets were not so filled with the noise of traffic, and the factories had yet to take the fragrance of seasonal blossoms from the night air. (p.145)

通りにはそれほど交通騒音はなく、夜気に漂う季節の花の香りを奪うほど悪臭を放つ工場も、まだなかった。(213頁)


 後半の文章の意味がよくつかめなくて、翻訳を参照する。take は「奪う」、とすると from は直前の名詞に係るというより、take と強く結びついていると考えるべきだろう(翻訳にどう反映させるかはまた別問題で、律義に「夜気から」とする必要はない)。「悪臭を放つ」を補っているあたりはさすがである。
 スピードアップの壁は、ボキャブラリーと想像力の貧困だ。