本の覚書

本と語学のはなし

永平広録第二

【読】或(も)し、山僧に、天童平生何なる言句ありて、霊羊角を掛くるの時に似たるを得るやと問うことあらば、ただ他に対えて道わん、我、先師を欺かざるを得ず。


【訳】もし、山僧(わたし)に、天童先師は平生どういう言葉によって没蹤跡悟りの境涯を示したか、と問うものがあれば、そのものに言おう。わたしは先師をだまさない(超えない)わけにはいかないと。(全集10,145頁)


 保福は「わたしは雪峰の弟子であり得ないことがあろうか」と言い、圜悟(えんご)は「わたしは先師法演に背くことはできない」と言った。しかるに道元の言葉は、「わたしは先師をだまさないわけにはいかない」であった。