本の覚書

本と語学のはなし

Oedipus Tyrannus


 ソポクレス『オイディプス王』より、冒頭のオイディプス王のセリフ。翻訳は高津春繁(『ギリシア悲劇Ⅱ ソポクレス』,ちくま文庫)。

Ὦ τέκνα, Κάδμου τοῦ πάλαι νέα τροφή,
τίνας ποθ’ ἕδρας τάσδε μοι θοάζετε
ἱκτηρίοις κλάδοισιν ἐξεστεμμένοι ; (1-3)

いにしえのカドモスが末の子らよ、かざしのついた嘆願の小枝とともに、そなたたちは私になんの願いがあって、そこに坐っているのか。(303頁)


 Jebbという人のコメンタリーを見ている。たとえば、「θοάζετε prob. = θάσσετε, ‘sit,’ ἕδρας being cognate acc.」というようなことが書いてある。学生時代に戻った気分だ。
 高津もこの動詞を「坐る」という意味として訳している。τίναςは直接的にはἕδραςにかかるのだろうが、「なんの願いがあって」と独立させているのは翻訳上の工夫だろう(ちょっとそう言い切る自信はないが)。