本の覚書

本と語学のはなし

Les Essais


 モンテーニュ『エセー』のスクリーチ訳と原訳。

Est-ce encore temperance et frugalité, d’ éviter la despence et la volupté, desquelles l’usage et la cognoissance nous est inperceptible ? (1.3)

Is it still temperance and frugality if we avoid expenditures the use of which ―― and pleasures all knowledge of which ―― we are incapable of perceiving?

だが、死後のわれわれが享楽することも認識することもできない出費や贅沢を遠ざけることも、やはり節制とか質素とかいうべきものだろうか。(1.32頁)


 原はあっさり訳しているが、スクリーチは一歩踏み込み、やや複雑な語の修飾関係を想定している。*1スクリーチのように読まなければいけないものかどうかは分からないが、こういう精読の姿勢は見ていて楽しい。


 原文がおかしなフランス語だとしても、私の写し間違えではない。モンテーニュの文章は、綴りも統辞も現代フランス語とは若干違うのだ。

*1:スクリーチに倣って原の訳語を並べ替えると、大体以下のようになる。「だが、死後のわれわれが享楽することもできない出費や、認識することもできない贅沢を遠ざけることも、やはり節制とか質素とかいうべきものだろうか」。