本の覚書

本と語学のはなし

『多読術』 〔50〕


松岡正剛『多読術』(ちくまプリマー新書
 私は読書家ではないし、怠け者なので面倒臭いノート作りの類もできない。にもかかわらず、この手の読書術や知の整理術の本を読むと、落ち着きを取り戻すことができる。
 メインテーマは、「読書は編集である」。それはそれでいいのだけど、もうちょっとテクニカルな部分に突っ込んでほしいような気もした。私が一番気になるのは、本はノートであると割り切り書き込みをしていく、セイゴオ式マーキング法である。実例の写真が載ってはいるけど、斎藤孝三色ボールペンのようなメソッドとして詳しく紹介されているわけではない。もちろん自分で編集するのだから、自分なりの方法を編み出す必要があるし、好きなようにやればいいのだろうが、ちょっともどかしい。


 「ちなみにモンテーニュの『エセー』(随想録)は、ぼくのキーブックのなかでも十指に入るキーブックです」(172頁)と松岡が言っているので、久し振りにモンテーニュが読みたくなった。キーブックというのは、そこを中心として重層的ネットワークが広がる結節点となるような本のことらしい。
 本棚の配列を一部変え、気ままに少しずつ読みたい本を集めてみた。モンテーニュ道元良寛、古典文学全集の一冊で『徒然草』『方丈記』『歎異抄』『正法眼蔵随聞記』を集めたもの(病院事務員時代の知的活動のミニマム期には、生涯この四編だけ繰り返し読んでいればよいと思っていた)、そして法華経
 こういうちょっとした知の組み換えが生じるから、この手の本は面白いのかもしれない。


 誤解のないように書き添えておくが、速読の本ではない。

多読術 (ちくまプリマー新書)

多読術 (ちくまプリマー新書)