本の覚書

本と語学のはなし

The Moon and Sixpence 続き

 図書館でモーム『月と六ペンス』の中野好夫訳(新潮文庫)を借りてきた。
 昨日問題にした部分を中野訳で見てみる。ちょっと粘っこいけど、この位が普通(と言っては悪いが)の訳だろう。

 金もでき、地位もでき、人生の成功者であるこの老人、それが今、もっとよい、生き甲斐のある生活だと知りながら、自分ではそれを生きる勇気のなかった生活を、別の人間の生活の中で生きようというこの構想は、案外皮肉なものになっていたのではあるまいか。*1

*1:「another」は「another life」のことなんだなと今気がついた。そうすると行方訳の具体性を帯びたパラフレーズも納得はできる。納得はできるが、そこまでやる必要があるかどうかは分からない。というより、この文章の持っている本当に皮肉な一面を消し去っているようような気がする。