本の覚書

本と語学のはなし

年賀状

 恥ずかしながら産業翻訳の話は未だ親には話していなかったのだけれど、今日届いた同僚の年賀状にはっきりと「退職」という文字が書かれていたので、とうとう知られてしまった。
 私は親を信頼していない。高校生の頃、東京の国立大学に行こうとしたら地元にしろと反対され、地元の国立大学に切り換えようとしたら急に東京に行ってくれと言う。文系反対、文学部などなおさら反対、本を読むことすら反対。社会人になってからだって、海外旅行反対、語学留学など絶対反対。一体何が目的なのだと言いたくなる。
 何を言っても頭ごなしに反対されると分かっているので、相談などしたこともない。
 ところが、今回は案外あっさりと引き下がった。言っても無駄だと親の方でも思っているのだろう。私の家族はみな、対話とか交渉が出来ない性質なのだ。
 公務員を続けていてはうつ病になるかもしれないとは言わなかった。風邪をひけば気の緩みとなじるような人間だから、うつを病気だと認めるはずがない。その代わり、1つ強烈なパンチを用意した。それについてはここで書けることではないけれど、公務員としての良心があるならば、いつか辞職しなくてはならない理由を、そもそもの初めに親が作っているのだ。それで仕方ないと納得したのかもしれない。
 翻訳が本当にやりたいことなのかどうか訊きもしないことには、いつもながら脱力と失望を覚える。しかし、これで楽に動ける。いよいよ新生活モードに本格的に突入である。


 忘年会のときに話をした良妻賢母の見本のような人の悲しそうな表情を、頭から振り払いつつ記す。