本の覚書

本と語学のはなし

『英文翻訳術』


安西徹雄『英文翻訳術』(ちくま学芸文庫
 翻訳の全てを語った本ではない。しかし、翻訳の入り口に立つための、必要にして十分なテクニックをほとんど網羅しているのではないか。翻訳者を目指す者のマストである。


 読み始めた頃にも紹介したが、安西は序章の中で、日本語として自立した訳文を得るための大前提を3つ与えている。


(1) 原文の思考の流れにできるだけ忠実に従うように工夫するべきである.そのためには,
(2) 原文の形式的な構造をなぞるのではなく,一度これを解体して,形式の背後にある思考の流れをよく読み取り,この流れを
(3) 日本語本来の構造に移しかえて再構成しなければならない.(20頁)


 文芸翻訳ならば更に文体の問題が出てくるだろうし、映像翻訳のように特殊な制限のための特殊な技能が要求されることもあるだろうけれど、基本はこれであり、ここからしかスタートすることはできない。

英文翻訳術 (ちくま学芸文庫)

英文翻訳術 (ちくま学芸文庫)