本の覚書

本と語学のはなし

Newton 2023年8月号【宇宙とは何か】

 宇宙に関しては、これまでも何度も「ニュートン」で取り上げられているし、別冊でも幾つか読んできたから、それほど新鮮味のある内容ではない。ただ、私の理解が徐々に深まってはいるようなので、同じことを読んでもまだ楽しむことができる。
 ある次元の時空での重力現象と、それより一つ下の次元の時空での量子現象が、実質的に同じ(区別できない)というホログラフィー原理、さらに進んで、時空は量子情報から生み出されるのかもしれないという量子ビットの理論など、宇宙論にはまだ果てしのない先がある。


 最後に「なぜ宇宙は存在するのか?」という問いが出てくる。しかし、これは物理学が答えうる問いではないだろう。
 若い頃は科学に魅力を感じなかった。それが形而上的なことに対して無力であると考えていたからであり、神秘主義的、ロマン主義的な傾向に毒されていた私には、どうしても馴染まなかったのである。
 もはやはそんな傾向もほとんど失ってしまった。哲学も形而上学も神学も宗教も、私が枕するところではない。その遍歴を後悔するわけではない。しかし、神秘ということを言うならば、数学こそ究極の神秘ではなかったかと、今は思う。