本の覚書

本と語学のはなし

野菜は小さい方を選びなさい/岡本よりたか

 著者は無肥料栽培を実践している人。その詳しい方法論については、後日別の本を読んでみるつもりである。
 タイトルやカバーがミスリードしているけれど、野菜の選び方について書いているわけではない。それも書かれているが、八百屋の目利きとか野菜コンシェルジュの蘊蓄と言った類いのものではなく、無肥料で育てた本来の野菜の姿を語るものであり、したがってスーパーで無肥料かいなか見分けなくてはいけない機会はほとんどないだろうから、これは目の前の野菜の選別技術を教授するものではなく、食の安全についてあれかこれかと問いかけているのである。
 農薬や化学肥料を用いる論理、それとは反対の発想である有機肥料の意外な落とし穴、有機栽培と表示されている作物に隠された意外な危険性、F1と呼ばれる交配種や遺伝子組み換えされた特許つきの種の世界征服など、ちょっと雑然としてはいるが、グローバルにミクロに、ときに著者の人生観なども交えつつ、食の安全性と野菜の本来のうまみについて語る本である。