本の覚書

本と語学のはなし

「祈りは初めて」という人のための本/内田和彦

 福音派の人の祈りの本。祈りの内容が七つ挙げられている。
 一つは、神を賛美する。詩篇や讃美歌などからふさわしいものを覚えておいて、祈りの前に唱えるとよいという。
 一つは、神に感謝する。呪いたくなるような状況においてこそ、感謝できることはないかと考えてみることが重要だという。
 一つは、罪、無力を告白する。人間は常に神に逆らう傾向を持っており、常に告白して罪赦された喜びを取り戻す必要があるという。祈れないという無力の内にも、祈ることができないと正直に告白するべきだという。
 一つは、苦しみや悩みを打ち明ける。祈った結果、事態が好転するとは限らないが、変わるべきは自分であると気づくこともあれば、苦しみが神を信頼することを習得する機会になったりもするという。
 一つは、願いを伝える。クリスチャンの日々の祈りの中心にあるものは、「みこころを教えてください」という祈りであるという。たとえ願いはかなえられなくとも、我々は神と共にある幸いを味わうという。
 一つは、他の人々のためにとりなす。家族、教会の仲間、牧師から始め、世界中の困難にある人たち、指導的立場にある人たちなどのため、また自分を迫害する人たちのため、神を信じない日本の九十九パーセントの人たちのためにも、とりなしの祈りをささげるべきだという。
 一つは、神が語ることに耳を傾ける。祈りはモノローグではなく、神との会話、ダイアローグであるという。

 「初めて」とは言っても、既に教会共同体の一員となっている人を読者に想定しているようで、本当に基礎の基礎のところは書かれていない。家事をしながらでも、運転をしながらでも(注意をしなくてはならないが)祈ってよいとはいうけど、私としては典型的な基本スタイルの祈りというのは、どういう姿勢をとるのか、跪くのか、指を組むのか、十字を切るのか、目をつぶるのか、頭を垂れるのか、というところから説明してほしかった。
 祈りの内容にしても、どのような場面で、どのような手順で、どのような文言で祈るのか、どの程度聖書や讃美歌を取り入れるのか、定型などはないにしても、実際に長年祈ってきている人の具体的な例を示してくれるとありがたい。