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雨月物語・癇癖談を始める

雨月物語 癇癖談  新潮日本古典集成 第22回

雨月物語 癇癖談 新潮日本古典集成 第22回

 『源氏物語』は短い「関屋」を終えて、今度は上田秋成の『雨月物語』を始めた。割と読みやすそう。
 最初の「白峯」は讃岐で崩御した崇徳上皇と、その霊を供養する西行が主人公。

 終夜よもすがら供養したてまつらばやと、御墓の前のたひらなる石の上に座をしめて、経文しづかしつつも、かつ歌よみてたてまつる。


   松山の浪のけしきはかはらじを
     かたなく君はなりまさりけり


 なほ心怠らず供養す。露いかばかりかそでにふりかかりけん。日はりしほどに、山深き夜のさまただならね、石のゆか、木の葉のふすまいと寒く、しん清み骨冷えて、物とはなしにすざまじきここちせらる。月は出でしかど、しげきがもとは影をもらさねば、あやなき闇にうらぶれて、ねふるともなきに、まさしく「円位えんゐ円位」とよぶ声す。(p.15)

 この円位が後に西行法師と呼ばれる人である。