- 作者:上田 秋成
- 発売日: 1979/01/01
- メディア: 単行本
『源氏物語』は短い「関屋」を終えて、今度は上田秋成の『雨月物語』を始めた。割と読みやすそう。
最初の「白峯」は讃岐で崩御した崇徳上皇と、その霊を供養する西行が主人公。
終夜供養したてまつらばやと、御墓の前のたひらなる石の上に座をしめて、経文徐に誦しつつも、かつ歌よみてたてまつる。
松山の浪のけしきはかはらじを
かたなく君はなりまさりけり
猶心怠らず供養す。露いかばかりか袂にふりかかりけん。日は没りしほどに、山深き夜のさま常ならね、石の牀、木の葉の衾いと寒く、神清み骨冷えて、物とはなしに凄じきここちせらる。月は出でしかど、茂きが林は影をもらさねば、あやなき闇にうらぶれて、眠るともなきに、まさしく「円位円位」とよぶ声す。(p.15)
この円位が後に西行法師と呼ばれる人である。