本の覚書

本と語学のはなし

恩讐の彼方に

 spero equidem mediis, si quid pia numina possunt,
 supplicia hausurum scopulis et nomine Dido
 saepe vocaturum. sequar atris ignibus absens
 et, cum frigida mors anima seduxerit artus,
 omnibus umbra locis adero. dabis, improbe, poenas.
 audiam et haec Manis veniet mihi fama sub imos. (4.382-387)

 けれど正義が何ほどか、力を持つとするならば、
 きっとあなたはその途中、岩にかかってこのひどい、
 仕打ちに対する復讐の、酒杯さかずき飲み干し「ディードー」と、
 この名をたびたび呼ぶことに、なられることに相違ない。
 離れていてもわたくしは、黒い煙の火を持って、
 あなたを追いかけその上に、冷たい死神がわたくしの、
 心と体を隔てても、怨霊となり、どこまでも、
 あなたのおられるとこにいる。不実の人よ、この罰を、
 必ず受けることになる。わたしはそのとき地下にいて、
 その成りゆきを聞きましょう、噂は地下までとどきます。

 アエネーアースがイタリアに向けて船出することを了承したディードーの、はなむけの言葉。