本の覚書

本と語学のはなし

倚りかからず/茨木のり子


 今月は読書がはかどらない。先月末から始めた七つの言語で詩を読む活動が、思いの外重荷になっているのだ。負担を軽減することにした。第一に、歴史参考書はやめる。第二に、道元には力を入れない。第三に、雑誌は読まない。第四に、縛りのきついローテーションは廃止する。外国語の詩はゆるゆると読めばよい。
 で、短時間で読了できる『倚りかからず』でもって弾みをつける。私にはどんなものがよい詩集であるかの一般的な基準が分からないのだけど、体の中に風が通り過ぎてゆけば、私のためにはよい詩集だと考えることにしている。

 私は家に居てさえ
 ときどき行方不明になる
 ベルが鳴っても出ない
 電話が鳴っても出ない
 今は居ないのです     (「行方不明」より)


 人は誰かにとって行方不明になる必要があるだけでなく、時々はあなた自身にとっても行方不明にならなければいけないのだ。

倚りかからず (ちくま文庫)

倚りかからず (ちくま文庫)