本の覚書

本と語学のはなし

『竜馬がゆく(一)』


司馬遼太郎竜馬がゆく(一)』(文春文庫)
 面白いことは面白い。幕末から維新にかけて、明確なイメージを思い描くことができる。職場で読むには好都合だろう。しかし、長すぎる。新聞小説ということで冗長な部分がでてくるのはやむを得ないが、小説作法そのものにも問題があるようだ。
 長大過ぎる作品と言えば、他に『坂の上の雲』(全八巻)、『翔ぶがごとく』(全十巻)、『菜の花の沖』(全六巻)を数えるくらいかも知れないが(後は長くても四冊以下だ)、なにしろ文庫化されている作品の数も多い。歴史を学ぶよりも、司馬を読むという大仕事に魅入られてしまうのではないか。


 新書や参考書で歴史に触れる方がよさそうな気もするが、もちろん『竜馬がゆく』は最後まで読む。司馬作品とどう接していくかは、結論を急がず、読みながら決める。竜馬はまだ我々の知る竜馬ではない。漠然と攘夷を考える一介の剣豪に過ぎないのだ。

新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫)

新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫)