●保坂正康『歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか』(朝日新書)
問題となっている領土は、仮に直接的な軍事行動を伴わなかったとしても、帝国主義的領土拡大政策の中で獲得されたものなのかどうなのか。そこをしっかり見極める必要がある。尖閣諸島が沖縄に編入されたのは1895年、日清戦争が終わる直前である。竹島が島根県に編入されたのは1905年、韓国併合の前夜である。そうした点が彼らのナショナリズムに訴えかけることも、忘れてはならない。
領土問題のすべてにアメリカが関わっていることも見逃すことはできない。北方領土の場合にはソ連の狡猾さであったかもしれないが、尖閣諸島と竹島の場合には、サンフランシスコ講和条約や沖縄返還に際して、アメリカが意図的にそれらの帰属を明確にしようとしなかった節がある。火種を残すことがアメリカの国益になると信じられていたようなのである。
歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか (朝日新書)
- 作者:保阪 正康
- 発売日: 2011/08/10
- メディア: 新書