本の覚書

本と語学のはなし

「青春は美わし」なんとなくドイツ語

Und ich, der ich fremd geworden und an ein unstetes und vielfältiges Erleben gewöhnt war, paßte nun wieder da hinein, als wäre ich nie fort gewesen, nahm Interesse an Menschen und Sachen, die ich jahrelang durchaus vergessen gehabt hatte, und vermißte nichts von dem, was die Fremde mir gewesen war. (p.46)

よそものとなり、長つづきしない多様な体験に慣れていた私だったが、今は一度も故郷を離れたことがないかのように、ふたたびここに順応して、幾年もすっかり忘れていた人々や物ごとに興味をおぼえ、異郷の提供してくれたものがなくとも、物たりなく感じなかった。(p.38-39)


 何となくドイツ語が沁みる。「ich, der ich」を見ては、代名詞を先行詞とする関係代名詞の後に、当の代名詞が繰り返されるなんて、いかにもドイツ語的だと思う。抒情的な文章のようでいて、「vermißte nichts von dem, was die Fremde mir gewesen war」なんてとても抽象的な表現で(和訳よりもう一歩抽象的である)、さすがにドイツ人の好みそうな書き方だと思う。そのくせ「fort」という基本単語を、フランス語の同じ綴りの単語と混同して、意味が取れなかったりする。
 ギリシア語とラテン語を続けていくのが難しいならば、せめてドイツ語だけでも救うべきだろうか。長い間まともに取り組んでこなかったけど、フランス語の読解力と比べてもまだそんなに遜色はない(ゾラよりヘッセの方がずっと簡単なのかもしれないが)。そんなことを考えるほどに、なぜか今日はドイツ語が沁みる。


 高校部の研修に行って来たら、定期テスト対策の問題作成もやってもらうかもしれないと言われた。高校部にいると、どんどんこの塾に取り込まれていく。ここの労働環境はかなりハードそうだ。安易に飛び込んではならない。油断せずにきちんと距離を測ること。