本の覚書

本と語学のはなし

眺めのいい部屋「通行権」

 Such was the embrace. He considered, with truth, that it had been a failure. Passion should believe itself irresistible. It should forget civility and consideration and all the other curses of a refined nature. Above all, it should never ask for leave where there is a right of way. (p.101)

 これが抱擁だろうか。失敗だと思った。確かに失敗だった。情熱は圧倒的なものだ。礼儀や思慮、洗練に必要とされる要素のすべてを忘れさせるものだ。なんといってもお願いなどすることではない。(p.191)


 婚約している2人が初めてキスをした後の、男性側の内面を描いている。「Curses」は呪いのことだけど、訳者の持っている本では別の文字がプリントされているのだろうか。洗練された訳を作ろうとしてやりすぎたのだろうか。「A right of way」はたぶん他人の土地を通行する権利のことで、ここでは婚約にともなう権利のようなものを比喩的に表しているのだと思うけど、仮にそうではないとしても、訳抜けはお粗末すぎる。


 それはともかく、去年の内に読了したいと思っていたが、読まない日が続いたためにようやく折り返し地点に到達したところ。最初たかをくくっていたほどには易しくもない。
 今後はフォークナー、ロレンス、ナボコフ、オースティン、ヘンリー・ジェイムズイーヴリン・ウォーブローティガンモームなどを読む予定。基本的には持っているものから消化していくつもり。