本の覚書

本と語学のはなし

枕草子


 特に書くこともないので、敬語のメモ。

 御仏名(みぶつみやう)のまたの日、地獄絵の御屏風取りわたして、宮に御覧ぜさせたてまつらせたまふ。(77 御仏名のまたの日

 御仏名の日の翌日、清涼殿から地獄絵の御屏風を上の御局へ持って来て、主上は中宮様に御覧にお入れ申しあげあそばす。


 「御覧ぜさせたてまつらせたまふ」についている注釈の全文。

「御覧ぜさせ」の「させ」は使役、「たてまつら」は主上から中宮への謙譲、「せたまふ」は作者から主上への最高敬語と見る。


 主上一条天皇、中宮は定子のこと。面白いと思ったのは、天皇から中宮への行為にも謙譲語を使うのだということ。通常、謙譲語は動作主を低めることで動作の受け手を高めるタイプの敬語だと説明されるけど、必ずしも動作主を低めるとは限らないのかもしれない。実際、富井*1は動作の受け手を高めるとしか説明していなかった。