本の覚書

本と語学のはなし

『失われた時を求めて1』


プルースト失われた時を求めて1 第一篇「スワン家のほうへⅠ」』(高遠弘美訳、光文社古典新訳文庫
 少し時間がかかったけど、無事読了。途中で意味が分からなくなりながら、まあいいやと思ってそのまま戻らずに読み進めることも多々あった。等閑でよいというよりも、必ず再読するという確信を抱いている安心感というか。
 他の訳は読んだことがないから比較はできないが、高遠訳はきっと一番読みやすいだろうと思う。すいすいとは進まなないものの、挫折しなくてはならないほどの困難を感じることはなかった。巻末の読書ガイドでは、既存の訳に対して「辞書の調べ方が足りない。あるいは調べたうえで文脈から考えようとしていない」とかなり厳しい評価を下している(自戒を込めてと繕ってはいるが)。高遠訳でなければ、プルーストを必要以上に言葉の奇術師として祭り上げ、つじつまの合わぬ翻訳に何か深遠な意味を見出そうと躍起になり、疲労困憊の果てに投げ出してしまうということにもなるのかもしれない。
 翻訳の完結には2、3年かかるだろうか。今月の新刊ラインナップに第2巻は入ってない(その代わりにジャン・ジュネを買わなくては!)。最初から14冊を目の前に置いて通読しようと意気込むよりは、刊行ペースに合わせてのんびりと構えていた方が最後まで読み通せるような気もする。
 それと、『消え去ったアルベルチーヌ』*1を最初に読んでおくというのは、やはり正しい戦略であるように思う。