本の覚書

本と語学のはなし

An Artist of the floating World


 オリンピックを見るためではないが、すっかり昼夜逆転の生活が続いている。
 『浮世の画家』から。翻訳はハヤカワ epi 文庫の飛田茂雄のもの。

I wasn’t exaggerating when I told you Miss Suzuki was responsible for my life. She’s been quite crucial on more than one occasion. (p.91)

おれの命は鈴木さんのおかげでもっていると言ったが、ちっとも誇張ではない。あの人はときどき非常に厳しい先生にもなる。(136頁)


 こんな翻訳はなかなかできるものではない。Crucial はたしかに「非常に重要、必要不可欠」の意味ではあるが、この後の文章を勘案するにしても、「厳しい先生」という訳は私には思い浮かばないだろう。だいたい、私は最初、「一度ならず〔危機的な状況に陥った時に、命を救うのに〕重要な役割を果たした」という意味に取っていたくらいである。