本の覚書

本と語学のはなし

『現代の金融入門』


●池尾和人『現代の金融入門』(ちくま新書
 リハビリに読む本ではなかった。
 新たな金融論テキストの標準となるものだという自負のもとに書かれており、決済機能や金融規制などにも言及されているが、もう10年以上前の著作であるし、金融危機を経た後でもあるし、書き直しが必要な部分も多くあると思う。
 個人的には、日本のメインバンク制と株式の持ち合いが果たしてきた役割についての解釈が面白かった。

 この点で、メインバンク制は、株式の持ち合いがもたらしかねない予算制約のソフト化を阻止する働きをしていたと考えられる。すなわち、メインバンクによる経営の監視がなされていたために、株主による直接の制約を免れていたにもかかわらず、従業員は、資本を浪費するような行動をとることはできず、資本の提供者に対して一定以上の見返りを提供しなければならなかったのである。
 要するに、株式の持ち合いとメインバンク制は対となってはじめて、日本的経営を可能にし、それを効率的なものに保つメカニズムとして機能してきたとみられる。(128,9頁)


 しかし、これらは日本経済が資本不足型の経済であって、企業の負債依存度が高かったという経済的背景を条件とするもので、今でも有効な制度ではないと結論されている。