本の覚書

本と語学のはなし

学道用心集


 せっかく全集を買っているので読まなきゃもったいない、というだけの理由で道元を読んでいる。

【読】識るべし、行を迷中に立つるは、証を覚前に獲るものなることを。
【訳】知るべきである、迷いの中で修業を始めることは、〔そのまま〕証(さと)りを、覚(さと)る前に得ることであることを。(『全集14』54頁)


 「学道用心集」からの引用である。悟りを得るために修行するのではない、迷いのさなかに修業をすることは、心意識の転変の有無にかかわらず、そのまま菩提を得ることである。恐らく道元は生涯をかけてほとんどこの一つのことしか言っていない。