●大村敬一・俊野雅司『証券投資理論入門』(日経文庫)
志が低いと言われるかもしれないが、こういう本を読んで、完全には理解はできなくても、最後まで内容をイメージしながら話について行くことができたというのは、役所を辞めて以来続けてきた勉強の一応のゴールに到達したと考えていいのではないだろうか。
これで金融工学の学習はおしまいという訳ではない。しかし、数理的に難解な本はたいてい大学で数学を専攻してきた人たちが書いたものだ。中年にさしかかって初めて高校数学を勉強したような素人が、その最奥の部分までも理解できるなどと幻想を抱いて、無駄な時間を過ごさない方が身のためである。ブラック=ショールズ公式の導出過程は分からなくても、その公式が何を前提とし何を意味しているのかイメージ出来れば十分である。実際、金融の実務家も、大方はその程度の理解で済ましているだろう。日常的に統計処理をしている人だって、例えば正規分布の密度関数をきちんと説明できるのかどうか怪しいものだと、私はにらんでいる。
今後は証券投資理論、コーポレート・ファイナンス、会計学あたりを中心に学びながら、現実の経済にももう少し広く目を向けて行きたい。