本の覚書

本と語学のはなし

『夏目漱石全集2』


●『夏目漱石全集2』(ちくま文庫
 収録作品は、「倫敦塔」「カーライル博物館」「幻影の盾」「琴のそら音」「一夜」「薤露行」「趣味の遺伝」「坊っちゃん」。
 全集を読むのは、半分くらい退屈な作業である。次は「坊っちゃん」だけでいい。気が向けば「倫敦塔」や「カーライル博物館」を付け加えるくらい。「趣味の遺伝」なんて完全な駄作である。構成もいけないが、いくら明治のこととは言え遺伝の理解がオカルト的に過ぎる。先祖の恋の気分なんかが子孫に遺伝してたまるものか。
 「坊っちゃん」を最後に読んだのは、東京を去る直前のことである。今となっては、何であの時激しく涙したのか、詳細には思い出せない。志賀直哉の「和解」と立て続けに読んで、顔がぐちゃぐちゃになるほど泣いたのである。私も損をして生きてることにかけては随分なキャリアを積んで来ているから、当時のように武者ぶるいをすることもないのだろう。今は漱石神経症の方に関心が向いてしまう。この巻の中でも探偵嫌いは随所に見えるが、「坊っちゃん」の中にもあったあった。

何だか生徒全体がおれ一人を探偵して居るように思われた。くさくさした。(282頁)


 さて、次は鴎外全集1巻。かなり前に始めたまま、放り投げてあった。「そめちがへ」から、少々退屈な気分を味わいつつ、再開する。

夏目漱石全集〈2〉 (ちくま文庫)

夏目漱石全集〈2〉 (ちくま文庫)