本の覚書

本と語学のはなし

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』 〔52〕


●ジェームス・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(田中西二郎訳,新潮文庫
 小説から遠ざかっているので、薄くて肩が凝らないものを選んでみた。
 高校時代の同級生がこれを読みたいと言っていたことを記憶しているのだが、なぜ読みたかったのかも知らないし、そう言ったこと以外に彼の思い出もない。ただこの作品を読みたいと言ったことだけが、記憶に残っている。
 ハード・ボイルドのミステリーという先入観で読んでしまった。それで間違いはないのかもしれないが、頭脳派の推理もなければ、派手な冒険活劇があるわけでもない。完全な娯楽小説ではないようだ。
 カミュの『異邦人』に影響を与えたという説があるらしい。カミュの先駆者であるなどという先入観は、もっといけない。しかし、その線で読む方が楽しめるかもしれない。