本の覚書

本と語学のはなし

『英文契約書の基礎知識』 〔45〕


●宮野準治・飯泉恵美子『英文契約書の基礎知識』(The Japan Times)
 慣れてしまえば難しいことはないのだけど、独特の言葉遣いに最初は戸惑う。
 翻訳の際には、知ってる単語も一度すべて専門用語辞典で定訳を調べないと不安である、というのはちょっと厄介だ。「もしくは」と「または」の使い分けなんかも、ちょくちょく確認することになりそうだ。


 ひとつだけ例文を書き抜いておく。

 The failure to exercise or enforce any right conferred upon any of the parties hereto hereunder shall not be deemed to be a waiver of any such right, or shall not operate to bar the exercise or enforce thereof on any other occasion.

 本契約に基づき当事者の一方に与えられた権利を実施または行使しなかったことは、当該権利の放棄とはみなされず、また、他の機会における同一権利の実施または行使の妨げとはならない。


 ここではそうなっていないけど、一般的には、「A or B」は「AまたはB」だが、「A or B, or C, D or E」になると「AもしくはB、またはC、DもしくはE」というふうに訳し分けることになっている。
 「here-」は「本契約」または「本条項」のことで、一般に「hereto」は「to this Agreement」、「hereunder」は「under this Agreement」を表わす。上の例文では「hereto hereunder」と二つ並んでいるけれど、前者は「本契約の」という意味で「当事者」という訳に含意され、後者は「本契約に基づき」と訳されている。一方、「there-」は本文中に出てくるものを受けるので、ここで「thereof」は「同一権利の」と訳されている。

英文契約書の基礎知識

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