本の覚書

本と語学のはなし

『波乱の時代(上)』 〔33〕


アラン・グリーンスパン『波乱の時代(上) わが半生とFRB』(山岡洋一・高遠裕子訳,日本経済新聞出版社
 前FRB議長グリーンスパンによる著書。上巻は回顧録という体裁になっている。
 この自由意志論者の共和党員に対しては今となってはいろいろ批判もあるが、ブラック・マンデーから9.11まで、幾度も危機的状況に対処してきたことには、素直に畏敬の念を感じる。


 まだサブプライムローン問題が表面化する以前の話であるが、こんな記述がある。

わたしはそれ以前に、サブプライムの借り手向けの貸出基準が緩められたとき、金融リスクが高まることに気づいていたし、政府の補助によって住宅所有を促す政策で市場がゆがむことにも気づいていた。しかし住宅所有者の拡大による利益は大きいので、このリスクをとる価値はあると考えていたし、いまも考えている。財産権の保護は市場経済にとって決定的に重要であり、それに対する政治的な支持が続くためには、かなりの層が私有財産を所有している必要がある。(339頁)


 この時期の低金利政策には日本のデフレが影響しているという説明もあったが、サブプライムへの対処ができなかった背景には、やはりイデオロギーの要因もあったのではないかと思う。

波乱の時代(上)

波乱の時代(上)