本の覚書

本と語学のはなし

『幽霊たち』


ポール・オースター『幽霊たち』(柴田元幸訳,新潮文庫
 私立探偵のブルーはホワイトの依頼を受けてブラックの監視を続けるが、ブラックときたら何か書きものをするか本を読むかちょっとした買い物をするか映画を見に行くかしかしない男なのである。何も起こらない。
 こういう設定はもう古典的で陳腐な部類に属するのだろうが、訳者の柴田元幸がオースターはアメリカにおけるおそらくは最初の「エレガントな前衛」と評するように、決して退屈はさせない。
 しかも最後には何かが起きてしまうわけで、読者は何だかよく分からないながらも完全に突き放されるわけでもない。
 これは目玉の物語でもあると思う。


 私は久しぶりに安部公房を読みたくなった。と思っていたら、訳者解説を見ると、どうやらカフカベケットと並んで、安部公房とも以前から比較されてきたらしい。


幽霊たち (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)