本の覚書

本と語学のはなし

『英文の読み方』

●行方昭夫『英文の読み方』(岩波新書
 目次を書いておくと、「はじめに 準備にかえて」「〈英文〉に慣れる まずは多読で腕試し」「正確に読む 1語1語を徹底的に」「筋を読む 論理の継ぎ目が肝心」「行間を読む 「言外」のニュアンス」「翻訳へのステップ 日本語表現のコツ」となっている。翻訳へも目配りをきかせているのは、著者が単に翻訳家としても活躍しているからだけではない。翻訳するところまで行かなければ、真に英文を理解していることにはならないと考えているからだ。一文一文を取り出せば原文を間違いなく和訳していても、つなげてみると何を言っているのかわからない。あるいは、間違いなく訳されたその一文も、日本語として何が言いたいのかよく分からない。それは、つまり文脈が見えていなかったり、どこに焦点が当たっているのか理解していなかったり、そもそも何も理解していなかったりするのである。
 まっとうな良書。『翻訳夜話』を読むのであれば、バランスをしっかり取るためにも、こういう本も読んでおく必要がある。

英文の読み方 (岩波新書)

英文の読み方 (岩波新書)