『夕凪の街 桜の国』

●こうの史代『夕凪の街　桜の国』（双葉社）
　意外と薄いので直ぐに読める。凄惨な描写もないので、そういうのが苦手な人でも読める。こうの史代は昭和43年生まれ。広島市出身ではあるが、当然被爆者ではない。被爆二世でもない。この漫画を描くまでは原爆を避けてきたと言う。焼夷弾に焼かれた街に住んでいながら、戦争のことはまるで知らない私にとっても、後ろめたさを感じずに読むことができる。
　薄い割りに３代に亘る物語がしっかり描かれている。被害者が加害意識に悩まされ、被爆者が被爆者を差別し、戦後60年を経てなお被爆二世へ偏見の眼は向けられる。
　夏になったら毎年読み返したい本だ。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)