本の覚書

本と語学のはなし

人と思想67 ゲーテ/星野慎一

 昔の装丁のものを学生時代に読んだことがある。記憶の中では、半分が島崎藤村で埋め尽くされているはずであった。今回読み直してみたら、日本文壇への影響にだいぶページを割いているとは言え、藤村の分量が突出しているわけでもないし、藤村への傾倒が熱っぽく語られているわけでもない。
 どうしてこれほど記憶が歪められたのだろう。あの時の憤慨もまた幻だったのだろうか。さっぱり分からない。
 とは言え、今回も満足しているわけではない。ゲーテの生涯を簡単に辿ってみるにはよいが、作品解説が不十分であるように思われる。日本文壇や東京ゲーテ記念館の方こそ、もっと圧縮した記述でよかったのではないだろうか。


 早くもゲーテ熱は冷めてきている。
 恋多き詩人。人間性の健全なる解放者。無秩序とロマン主義の敵。自然のあらゆる営みに神の摂理を看取する汎神論者。公共性への没我の内に諦念の至高の形態を見出し、奉仕する女性の内に永遠の女性的なるものを見出した保守的現実主義者。
 かつては私もそういう人間を目指していたのかもしれない。だがその全てから、半歩ずつずれてしまったのだ。

【振り返り】2023年1月

【転職】
▼転職のための面接を受け、合格した。現在の会社は2月で退職し、3月から新たな職場で働くことになる。
▼今までとの大きな違い。日勤である(早番と遅番の時間差はちょっと大きいが)。基本的に外部の人との関わりはなく、職人仕事のようなものである(人手不足の部門の応援のために、しばらくは外部の人と接触する別業務もしなくてはならないようだが)。資格を取ると優遇される。月給である(これまでは日給月給)。多少残業があるらしい。職場も会社も徒歩10分以内のところにある。
▼内定の後に取った行動。参考書をまとめて購入。スマホを契約し、電子マネーも使えるようにする。恐ろしく久し振りに服を購入(今は制服で通勤している。今後は着るものにも少し気を遣いたい)。中近両用の眼鏡を新調。新たな銀行口座を開設。


【雪】
▼暖かい日が続いて、一旦雪はほとんど消えた。
▼月末になって寒波がやって来た。雪もかなり降る。雪かきと通勤で疲労する。


【読書・語学】
▼捗らない。来月からもう少し細かく進捗状況を記録したい。
フランシスコ会訳聖書。イザヤ書を読んでいる。
ウェルギリウスゲーテが新生活の中で継続可能かどうかは分からない。ずれも聖書の翻訳に替える、ゲーテだけホームズの独訳に替える、といった可能性も考えられる。


大学入試 漆原晃の物理基礎・物理[波動・原子編]が面白いほどわかる本/漆原晃

 ようやく高校の物理に一通り目を通した。最初はこういうやさしい講義口調のものから入るのは悪くはないのだろうし、波長が合うのならこれを徹底して繰り返してもいいのだろう。
 ただ、私はもう少しすっきりとして簡潔な参考書の方が好みである。次は『折戸の独習物理』を読んでみようと思う。こちらは1冊で全分野をマスターできるらしい。


 金属を燃焼させると、それぞれの金属に固有の色が発せられる。花火でも用いられる炎色反応である。化学では単に金属と色とを覚えるだけであるが、物理ではその原理を数式で扱うことができる。
 才能があるか否かは別として、若い頃に数学と物理に目が開かれていなかったのは、不幸なことであった。