本の覚書

本と語学のはなし

ギリシア神話(上)/呉茂一

 ギリシアやローマの文章を読むときには、それが哲学的なものであっても、神話を頭に入れておいた方がよい。
 哲学者たちは不敬な物語を真実として認めはしないにしても、何かと言及することはある。あるいは詩人たちを引用することがある。むろん詩人たちは神話に取材することが多いのである。
 久し振りに呉茂一の『ギリシア神話』を読んでみた(まだ上巻が終わっただけだが)。神話成立の歴史的背景や、異伝などにも詳しく触れられており、この本と高津春繁の『ギリシアローマ神話辞典』(岩波書店)があれば、たいてい間に合うだろうと思う。
 だが、どちらも読むのにじゃっかん骨が折れる。一般的な必要を満たすだけなら、ブルフィンチとか、あるいはもっと薄くて主要な神話だけを要領よく編んでくれる本で十分かもしれない。


 上巻は主に神々の話。
 最後に人間たちの物語が始まるのだが、英雄たちというのは大概神々やニンフの子であったり、子孫であったりする。その行動にもなにくれと神々が干渉する。英雄時代はまだまだ神々もアクティブなのである。