本の覚書

本と語学のはなし

ローマ皇帝伝(上)/スエトニウス

 上巻ではカエサルアウグストゥスティベリウスの3人が扱われる。
 必ずしも歴史を年代順に記したものではなく、むしろ人物を知るためのエピソードをいろいろ集めてきたという感じの本。したがって、ローマ史を知るために最初に読むべきものではない。


 ローマの皇帝というとネロの異常な残虐さを思い浮かべるかも知れないが、アウグストゥスの後を継いだティベリウスにおいて既にその兆候は示されていた。彼が死んだとき、市民は驚喜し、「ティベリウスをティベリス川へ」と叫んだ人たちもいたそうだ。処罰された者は「阿鼻叫喚の石段」というところに投げられ、長柄鉤でティベリス川に引きずられていくのが常だったのである。
 親族を始め、多くの者が殺された。人が処罰されない日はなかった。自殺しようとする者は無理矢理生かされ、死を引き延ばされた。一刻も早く処罰をしてくれと望む者には、「まだお前とは仲直りをしていない」と答えた。処女には絞首刑を課すことが許されていなかったので、予め死刑執行人に陵辱させた。子どもすらティベリス川に投げ込まれた。
 ティベリウス考案の拷問もあったそうだ。

 いろいろな拷問を用いた中に、ティベリウスの考案したものもあった。たとえば被告をだまして大量の酒をのませ、突然男根をきつく縛り、その責めつるの締め付けと同時に、膀胱ぼうこうの膨張とで痛めいじめた。(p.291)