ここまでが長大な『神の国』の前半。キリスト教への非難に対して反論しようとするものである。
ヴァロやプラトン派、特にポルフュリオスの著作を引きながら、キリスト教の立場から反駁を加える。これらの引用は、本書の他には伝承されておらず、古代の思想史研究にとっても重要な資料となっているらしい。
どうやらアウグスティヌスは異教徒の神々やダイモンたちを否定しているわけではない。それらは存在するであろう。しかし、それらを拝んだからと言って幸福にはならない。それらは神と呼べるものではなく、所謂悪霊であるのだから。
イエスの時代からだいぶ下っているとはいえ、アウグスティヌスも古代の人である。悪霊は新約聖書にも登場するのであるから、彼らにとっては恐らく文字通り存在したのだろう。
もちろん、悪霊の存在を信じるからと言って古代人と決めつけるわけにはいかないし、知性の欠如を結論づけるわけにもいかない。