動物を侵すウイルスが直ちに人間に感染するとは限らないし、人体に入ったとして病気を発現するとも限らないが、予め研究をしておけばいざという時に迅速に対応できる可能性が高くなる。
更にいえば、予算がつかないので調査は進んでいないようだが、動物にとって病原性でないようなウイルスに対しても、それがいつ人間に対して毒性を有するようになるか分からないのだから、次のパンデミックを阻止するためには、網羅的に研究する必要があると著者は考える。
この本は新型コロナウイルスが猖獗を極めている時期だからこそ出版されたのかも知れないが、必ずしもコロナウイルス入門として書かれたわけではないようだ。
ウイルスはただ病気や死をもたらすだけではない。生物の進化に深く関わってきたという一面もある。例えば哺乳類に胎盤が形成されたのは、レトロウイルスによって書き換えられたDNAのおかげであるらしい。
地球環境が大きく変化するような宇宙的なイベントが起こるとき(太陽の大規模なコロナ質量放出とか地球の地軸反転、あるいはひょっとするとガンマ線バーストなど)、レトロウイルスによるDNAの逆転写が活発になるともいう。それが環境に適応するための進化を促してきたのかも知れない。
ウイルスとの共進化こそ、著者の関心の中心なのである。