本の覚書

本と語学のはなし

エウセビオス「教会史」(下)/エウセビオス

 下巻はオリゲネス、異端、迫害、そしてコンスタンティヌス帝のミラノ勅令あたりまでが記述される。
 エウセビオスコンスタンティヌス帝と同時代の人であって、後にニカイア公会議でニカイア信条の作成にも大いに関わっている。ただ、アタナシウス派アリウス派に対するエウセビオスコンスタンティヌス帝の立場は、どうやら一筋縄ではいかないようだ。今後はそのあたりも学ぶ必要がある。
 ちなみに、訳者の秦剛平は後書きの中で書いている。ヨセフスの近代語訳者としてその名を不滅のものとしたウィストンという学者が、次にエウセビオスに取りかかり、その結果アリウス主義に走って、大学からも教会からも追われてしまった、と。
 秦自身、ヨセフスを訳し、エウセビオスを訳し、七十人訳を訳している人である。その人が、ヨセフスとエウセビオスを読んだなら自ら立てるであろう問いの一つに、こんなことを挙げている。

(3) エウセビオスが用い、またそれによって教会著作家が「キリスト論」に娼婦の厚化粧を施すことのできた『七十人訳』とは。(p.415)

 秦が歴史のイエスをどう考えているのかは知らないが、少なくともイエスをキリストであると信じるキリスト教を、つまりキリスト教の正統的な信条を、まったく信じていないことは確かである。