この本の前半では、推測も交えながら、シェイクスピアの足跡を辿っていく。
町長にまでなった父親が没落するのは、カトリックであったかららしい。シェイクスピア作品において宗教が前面に押し出されることはないが、宗教対立あるいはカトリック狩りの背景を押さえておくことは必要であろう。
堅実に蓄財と投資をした。彼の手元には一冊の本もなかった(出版業者の友人の店で読ませてもらっていたと河合は考える)。手紙は全て処分され、個人的なやりとりの痕跡はほとんど残されていない。
後半は作品の世界と哲学を解説する。
悲劇は To be, or not to be(あれかこれか)の世界であり、喜劇は To be and not to be(あれでもあり、これでもある)の世界である。全体に記述がやや定式化されすぎている感はあるが、これはその中でも面白い方だろう。