本の覚書

本と語学のはなし

から騒ぎ/ウィリアム・シェイクスピア

 “Much Ado about Nothing” というタイトルの nothing の音は、エリザベス朝当時の発音では noting に通じるという。


 第2幕第3場のやりとり。

バルサザー 節を付ける前にお願いのふしがあります――
私の節に不審な点がありましても不問にふしてください。
ドン・ペドロ これは不思議なことを聞く。不問にふせと言うが
節回しは譜面にふしてあるのではないかな。

BALTHASAR Note this before my notes:
There's not a note of mine that's worth the noting.
DON PEDRO Why, these are very crotchets that he speaks―
Note notes, forsooth, and nothing!


 『空騒ぎ』は単なる「空」騒ぎなのではなく、「注意を払うこと」あるいは「気づくこと」をめぐる喜劇でもある。