- 作者:ウィリアム・シェイクスピア
- 発売日: 1983/10/01
- メディア: 新書
おまえもか、ブルータス! 死ぬほかないぞ、シーザー!(第3幕第1場)
Et tu, Brutè?―Then fall, Caesar. (3.1)
初めての作品だとばかり思っていたが、古本で買ったわけではないのに読んだ形跡がある。読み始めてみると、確かに記憶がある。ブログに記録は残っていないから、相当昔のことであるらしい。
してみると、案外未読のシェイクスピアは少ないのかもしれない。
ジュリアス・シーザーというのは、ユリウス・カエサルのことである。
シーザーが主人公であるのかどうか、昔から意見の分かれるところだった。というのも、シーザーは劇の中程で早くも暗殺されてしまうのだ。
引用したのは、凶刃に倒れるシーザーの有名なセリフ。「Et tu, Brute」はラテン語である。それ程に、当時からよく知られた言葉だったのだろう。出所は材源とされるプルタルコスの『英雄伝』ではなく、スエトニウスの『ローマ皇帝伝』。
- 作者:スエトニウス
- 発売日: 1986/08/18
- メディア: 文庫
「倅」と訳したギリシア語「テクノン」は「若僧」ぐらいの意。一般に「わが子」と訳されるが、ブルトゥスは前85年生れで、カエサルはそのとき15歳。二人が父子ということは想像できないだろう。(p.308-9)
いつの間にかギリシア語がラテン語に訳され、「倅よ」が「ブルータスよ」に置き換えられたものらしい。
そして、劇の前半がそうであったように、後半もそのブルータスを中心に展開され、最後はブルータスの死をもって悲劇が完結する。
主人公はブルータスであったと言うべきかもしれない。