本の覚書

本と語学のはなし

ペリクリーズ/ウィリアム・シェイクスピア

 問題劇は終わり、ここからの4作はロマンス劇。シェイクスピアのキャリア晩年の作品群である。
 問題劇を超え、悲劇を超え、おとぎ話のような融和の世界が最後に待っていた。


 ペリクリーズはペリクレースのことであるけれど、歴史の教科書に載っているアテネの政治家ではない。ツロ(ツロは従来の聖書で用いられた表記。新共同訳ではティルス。英語ではタイア)の王である。
 舞台となる諸都市はだいたい聖書でおなじみのところであるが(たとえばタルソもアンティオケもミティリーニもパウロゆかりの地である)、聖書物語とは何の関係もない。
 数々の艱難の末に、死んだと思われていた娘と妻とにめぐりあう回復の物語であり、そこに復活の信仰を見るとすれば、その点で聖書的な物語ということはできるかもしれない。